芸術的な時計製造技術をたたえ、芸術、歴史、文化からインスピレーションを得るヴァシュロン・コンスタンタンの「メティエ・ダール」コレクションに、この度、新作「メティエ・ダール - 伝統的シンボルに敬意を表して - 」が加わった。この新作は、中国の伝統文様「海水江崖」を2通りに解釈し、異なる手法で表現した4種類のタイムピースから成るシリーズだ。海中にそびえ立つ山岩に激しく打ちつける波濤を表現したこのモチーフは、宮廷建築、調度品、焼き物、そして「龍袍(りゅうほう)」と呼ばれる皇帝や皇族の吉服にも使用されていた吉祥文様である。
ヴァシュロン・コンスタンタンの「メティエ・ダール 伝統的シンボルに敬意を表して」シリーズは、14世紀から20 世紀初頭の中国最後の王朝時代に華開いた歴史と文化の旅へと誘うモデルだ。この時代特有の装飾に対する造詣を深めるなか、メゾンはその装飾美術にとりわけ関心を持ち、宮廷建築のほか、調度品や磁器、特に「龍袍(りゅうほう)」と呼ばれる皇帝や皇族の吉服(祭礼時に着用する装束)にもみられる「海水江崖」文様に着目。豪華な刺繍が施された絹の祭礼服は、その文様によって独特の象徴性を伝えていた。
この研究にあたり、メゾンはかつて北京故宮博物院の副研究館員を務めていた宋氏に助言を求めた。中国の歴史とシンボリズム(象徴主義)の専門家である宋氏の協力のもと、メティエ・ダールの4種類の限定モデルのダイアルの「海水江崖」文様に焦点を当てて研究された。宋氏によって広範に記録されたこの描写は、海にそびえ立つ岩に激しく打ちつける大波を表現している。吉服の裾や袖口部分に刺繍されたこの装飾は、身に着ける者にとって縁起の良いものとされていた。
中国語では、「潮」と「王朝」の「朝」は同音異義語である。「崖」には「生姜の芽」という意味があり、この海を見下ろす急斜面の縁にそのフォルムを見ることができる。水と山は中国では伝統的に強い領土の象徴でもあることから、「海水江崖」を祭礼用装束にふんだんにあしらった皇帝の姿は、安定を体現していた。波浪の上にそびえる揺るぎない岩が平和と長寿の象徴であるように、皇帝は国家の富と繁栄を保証する存在だった。荒波の中にあっても動じることなくそびえ立つ山々が、人生における予期せぬ変化にも対峙する皇帝の在り方を象徴していた。この文様は人気を博し、家具、彫刻、装飾品、建築などに用いられ、あらゆる社会階級に広まっていったのである。
直径38mm、18Kピンクゴールドと18Kホワイトゴールド製ケースの心臓部で鼓動するのは、その美しさとコンパクトなサイズ感(直径26.2mm、厚さ3.60mm)により選ばれた自社製ムーブメント、Cal.2460だ。中央の時・分針を駆動するムーブメントの構造がダイアルとの美しい一体感を実現し、過ぎ行く時間に広がりと奥行きを与える。約40時間のパワーリザーブを備え、原産地と時計製造技術を証明するジュネーブ・シールのすべての基準に準拠している。22Kゴールド製ローターには、波や潮の流れを想起させるモチーフが繊細に彫金され、ダイアルの意匠と呼応している。
満天の星空を背景に、生姜の芽をかたどった植物に縁取られた山々の頂が、高波に洗われている。中国の伝統的な装飾を尊重し、色彩豊かな美しさを持つこの作品は、中国発祥のクロワゾネ・エナメル技法を用いた傑作だ。「景泰藍」とも呼ばれるこの技法は、明の景泰時代に最盛期を迎えた。多彩で複雑なフォルムを組み合わせた躍動的なデザインに相応しい技法が選択された。
「海水江崖」文様を形成するエナメル装飾を描く220本の金線がを敷き詰めるのに、輪郭形成だけでも50 時間以上の作業を要した。その後、色と彩度に応じてエナメルを複数回にわたり施し、各層毎に炉で焼成する。このタイムピースの特徴である豊かな色合いに到達するまでに約70 時間を費している。さらに文様に実体を与える金線のクロワゾネ(仕切り部分)を際立てるために、最終的なポリッシュ仕上げを作品に施す。最後に、半透明のエナメルコーティングが、繊細な線と古来の技巧で見事に昇華した、この非常に建築的な構成の作品に独特の光沢を与えている。
もう1つの「海水江崖」文様の作品で目指したのは、モノクロームのベースに奥行きのある効果を実現することだった。モデルによって18Kホワイトゴールドまたは18Kピンクゴールドで製作されたダイアルは、ダイヤモンドがセッティングされたくぼみに施された連なる波浪、立体的なブルーのエナメルが施された部分、山々が見事に融合し表現されている。熟練職人たちが様々な技法を駆使して作りあげたこの文様は、繊細でありながら独特の美しさを醸しだしている。
タグ:
高級時計コピー